カナリア ★★★★☆ 80点

やっと見ることが出来ました。感想を書くのが難しい映画です。もっと見た後すぐに書けば良かった。
賛否両論ある作品ですが、私は好きです。映像の中にその後の展開に関連する隠喩を含ませているように思えましたが、それが私のような鈍感な人間でも感じやすく、セリフも多いので話がわかりやすかったです。ただ、そのような隠喩に全く興味が無い人、あるいは逆にそれらのセリフなどが説明過多だと感じる人もいるかもしれません。また、宗教団体によるテロという社会的問題を扱っているのに、結果的に主人公だけの物語に収束してしまっているのも賛否が分かれるところでしょう。社会派映画として見ると、物足りなく感じるかもしれません。
何よりも、出演者の演技が本当に良かった。主演の石田法嗣くんと谷村美月さんと谷村美月さんと谷村美月さん(笑)。ラストの雨のシーン以降の演技は神がかり的だと思いますよ。『うちがあんたの妹を連れて来たる。連れて来られへんかったら、うちがあんたと一緒に死んだるわ!』『子供はな、子供は親を選べへんのや。親は子供を選べるんか!?』。本当に鳥肌が立ちました。その後の塩田明彦監督お得意の衝撃的ラストで全て吹っ飛びましたが(笑)。彼女は役についてよく理解し、自分を消して登場人物に入り込むタイプです。彼女の尊敬する女優は宮崎あおいさんだそうですが、宮崎さんは宮崎さんという枠を通して登場人物を伝えるタイプ(男優や、経験豊富な名優にはこのタイプが多い)、谷村さんは谷村さんという枠を通さずに登場人物を伝えるタイプで、映画『虹の女神』に関するインタビューでは触れもしなかった主演の上野樹里さんに近いと思います(このインタビューでは主演の上野さんを差し置いて蒼井優さんをベタ褒めしていましたけど、嫌いなのかな?)。ただ、上野さんんより優れているのはアイドル性。宮崎さんには及びませんが、ここは結構重要です(笑)。石田くんは、失礼ながら田舎っぽい顔をしていますが、目力があります。少し柳楽優弥くんに似ているようですが、柳楽くんより汎用性を高そうです(笑)。その他、西島秀俊さん、りょうさん、甲田益也子さん、品川徹さんと名優が揃っています。西島さんは宗教団体の子供世話係で、厳しい表情を見せますが、不気味なほど似合っていました。
カメラマンは是枝裕和監督作品でお馴染みの山崎裕氏。本当に良い映像を撮りますが、手ブレを多用しているので、家の小さなテレビで見るのは少しキツイです。この人の映像は劇場で見て何ぼです。
いつにも増してまとまりのない感想ですが、何か思い出したらそのうち書き足すかもしれません。くどいですが、とにかく谷村美月さんは素晴らしいです。

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