初恋

宮崎あおい繋がりで読んでみました。今週末に公開される、三億円強奪事件を題材にした同名映画の原作本です。
「私は、『府中三億円強奪事件』の実行犯だと思う」と語るまえがきで物語は始まり、物語の主人公は作者と同じ名前である中原みすず。そしてこの作者は正体不明。新人作家によるただのサスペンス作品なのか、あるいは本当に犯人が書いた自叙伝なのか・・・・・・興味をそそられたので読んでみました。
感想としては、まあ、よくわからん、といったところ。舞台になっている1960年代は、文献やニュース映像で目にすることはあっても、私の年代ではイマイチ想像し難い時代です。学生運動、ジャズ喫茶、ヒッピーなど、分かっているようでわかっていない事柄がたくさん出てきます。本文は171ページと短く、さらりと読めてしまう点は読書ではない私は好感が持てましたが、登場人物の掘り下げはかなり浅く、想像力を働かせないと人物の行動や言動の意味を読み取ることができません。手記としてはOKな文章かもしれませんが、小説としてはNGです。ただ、そのことがかえって作者が事件の実行犯であるということに現実味を持たせているのも確かです。事件の実行シーンはかなりハラハラしますが、その後は救いようの無いほど切なく悲しいラストへ一直線に進み、読んだ後には心の奥に何か重いものが残ります。
とりあえず、映画は宮崎あおい目当てで見に行きますが、実際に想像がつかない1960年代の日本という世界のイメージを映画で補えたらいいなと考えています。