蝉しぐれ 80点

山田洋次の時代劇の映像は、『無駄のないリアル』を追求しており、暗いところは暗く、殺陣の完成度も『アクション監督か?』と思えるほど高い完成度を出しています。一方この映画は、リアルさよりも美しさ、わかりやすさを重点的に演出しており、殺陣はテレビドラマ並だし、画面の隅から隅まで非常に明るいです。どちらが良いか簡単に決められるものではありませんが、山田洋次の渋い映像が好みの人には、この映画の映像はあまり受け入れられるものではないかもしれません。黒土監督の演出は山田監督には遠く及びませんし、舞台が山形なのに喋っているのは全員共通語です。途中、織り交ぜられる四季の映像はそれほど必要性が高いとはいえず、『これを見せたかったんだ!』感が強いです。
でも全体的には良い映画だと思いました。市川染五郎の立ち振る舞いにはうっとりさせられますし、木村佳乃ってこんなに綺麗だっけ?と思うほど綺麗に撮られています。今田耕司ふかわりょうが意外と好演していたし、期待していた佐津川愛美も凄く良かったです。ただ、子供時代の他の役者がどうかなぁと思う点も多々・・・・・・基本的にみんなセリフが棒読みです。役者の演技が悪いのか監督の演出が悪いのかわかりませんが、十代の優秀な俳優が不足していることは間違いないでしょう。棒読みだった脇役2人は、成長してお笑い芸人になったわけですね(笑
音楽は岩代太郎が担当。『あずみ』でいいなと思った人です。まだ若い(といっても40代ですが)のでこれからも期待したいです。ちなみに予告編で流れていた一青窈の歌は、エンドクレジットを含め劇中では一切流れませんでした。
文四郎と父が別れるシーン、蝉しぐれの中を文四郎とふくが車を押すシーン、文四郎とふくが再会するシーン、文四郎とふくが別れるラストシーンは結構ウルウルきました。泣き所の演出はしっかりしてあったようです。
あと、文四郎とふくが花火を一緒に見るシーン。やたら花火がカラフルだったのですが、江戸時代には確かあんな花火はないはず。もう少し何とかならなかったのでしょうか。
ちなみに私は山形に何度か行ったことがあります。夏は本当に暑く、冬は本当に寒いところです。劇中の夏は本当に暑そうでしたが、冬はそうでもなかったです。。。
蝉しぐれ@映画生活